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論文Ⅱ 日光東照宮陽明門唐油蒔絵の制作についての考察

  日光東照宮で平成の大修理が行われる中、平成25年(2013)から平成29年(2017)にかけて陽明門の修理が行われた。この修理に際し、東西壁面の牡丹立木浮彫の羽目板が取り外され、その下に描かれた壁画が公開された。日光東照宮に残る文献や昭和の修理の際に行われた調査によって、東側の壁画は「唐油蒔絵」という油彩画の技法で描かれていることが確認されていた。平成の修理に際し、西側の壁画についても詳しい調査が実施され、乾性油の使用が報告された 。これらの壁画には損傷が著しかったため、彩色層の剥落止め修理を行うこととなり、平成26年(2014)から平成28年(2016)にかけて、東京国立文化財研究所の監督のもと、筆者を含めた油彩画修理技術者が東西壁面に描かれた「唐油蒔絵」の修理に携わる機会を得た。
  この「唐油蒔絵」については、乾性油と顔料による油彩画であることが確認されているものの、江戸時代中期に描かれた大画面の油彩画という珍しい事例であり、その制作背景や制作技法について詳しいことは判明していない。本稿では漆工芸分野で古くから日本国内に受け継がれてきた「密陀絵」の技法、南蛮文化や蘭学を通して日本に流入した西洋絵画の技法との関連を視野に、文献調査、制作実験などを通して「唐油蒔絵」の制作背景や制作技法について考察をおこなった。

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