龍澤山善寳寺五百羅漢像模刻制作から見る造像技法の一考　門田真実・柿田喜則・笹岡直美

ブックの説明

龍澤山善寳寺五百羅漢像模刻制作から見る造像技法の一考

“A study of statuary techniques from making replica on 500 Arhats in the Zenhoji temple,Ryutakusan”

門田真実　MONDEN,Makoto
柿田喜則　KAKITA,Yoshinori
笹岡直美　SASAOKA,Naomi

　龍澤山善寳寺（山形県鶴岡市）五百羅漢像(以下、善寳寺像)は、これまでの調査から、「畑」及び「畑次郎右衛門」の銘文が発見されたことにより、善寳寺像は京都仏師・畑次郎右衛門を中心とした仏師集団によって江戸時代後期に分業で制作された可能性が高いことが判明している。その表情や手足の動き、着衣など1体として同じものは見られずバラエティーに富んでいるが、群像としての統一感を感じさせる。像制作には複数人が分業で携わったと考えられており、統一した造形を保つためには工房内や仏師間に何らかの共通した造像技法の存在があると予想された。そして、修復事業における学術調査から、その技法の一端と見られる目印「錐点」が善寳寺像頭部に発見された。
　錐点とは、仏像を制作する際、基準とする位置に錐で穴を開け、彫り進めることで下図が失われても基準点を見失わないようにするための工夫である。善寳寺像のような群像を制作する際は、多くの仏師の手で分業されることから、錐点によって顔の造作比率をあらかじめ定めることで、効率よく、統一した造形を保ちながら制作を進めることができたと考える。
　先行研究者によると、仏師の間には造像比例法という仏像の造形法則が存在し、仏像の「髪際∼口」までの距離を基準に各部材の割合比率を定め、その目印として錐点という技法が用いられていたと類推している。 そこで、善寳寺像頭部の錐点が造像比例法に関連していると考え、錐点同士の間隔距離が、善寳寺像制作時の寸法を定める際の基準となっているのではないかと推測した。
　本研究では、善寳寺像頭部正面の錐点同士の距離と像の主要箇所を、X線写真を用いて計測を行い、計測値を比較し、善寳寺像造像における規則性の有無と、錐点と造像比例法との関係性の考察を行う。また、制作者の畑次郎右衛門一派の造像技法の傾向と、造像比例法と錐点が実際の制作にどのような役割を担うか、善寳寺像【22-30】の模刻制作から検証・考察を試みる。

　In this study, I focused on the cone points found on the face of the 500 Arhats statue of Ryutakusan Zenhoji temple in Turuoka city , Yamagata prefecture. The cone points is said that “KIRITEN”.
The 500 Arhats statue were created by more than one persons in the late Edo period.
KIRITEN is a marker to keep the standard points in the sight. It is an ingenious way to create a Buddhist statue. The use of KIRITEN makes it possible to create a unified form of many Arhat.
A discussion of the image making techniques used in sculptured group expression from the measurement of the arhat’s size.
Furthermore, making replica on a arhat . And then consider what “KIRITEN” play in the actual production process.