総ページ数

P20

ブックの説明

古文書と寺社・石碑にみる山形市蔵王上野の信仰
The Faith of Zao-uwano, Yamagata City Through Old Documents,
Temples, Shrines and Stone Monuments

竹原 万雄
TAKEHARA Kazuo
芦野 七海
ASHINO Nanami
加藤 彩花
KATO Ayaka
土井愛夕美
DOI Ayumi

 山形市蔵王上野地区は、瀧山西部の丘陵地帯に位置し、江戸時代は上野村であった。現在は「やまがたの棚田20選」に認定されており、江戸時代以来、山林と耕地を利用した生業形態であった。本学では、平成26(2014)年7月から同地区の古文書約1,900件を整理し、令和2(2020)年2月に『山形市蔵王上野文書目録』を刊行した。その過程で発見した古文書が、本稿でとりあげる『鎮守氏神并神仏堂宮々并供養石書上帳』である。同書には、明治3(1870)年段階に存在した寺社だけでなく石碑やその場所まで書き上げられていた。そこで本稿では、本史料を手がかりに、令和元(2019)年に実施した現代の寺社・石碑調査の成果を踏まえ、とくに蔵王上野の生業に関わる信仰について検討した。
 その結果、『鎮守氏神并神仏堂宮々并供養石書上帳』に書き上げられた寺社・石碑のほとんどが現存することを確認できた。また、寺社としては山神堂、石碑では湯殿山塔・蔵王山塔・子待供養塔・己巳弁天二世安楽供養塔・象頭山塔・水神堂において、農業や水・山といった蔵王上野の生業に関わる信仰がみられた。さらに、秋葉神社や古峯講の台帳からは、火防(火伏せ)や盗難除に加え、蚕の安全・養蚕繁昌の信仰もみられた。以上のことから、蔵王上野では150年以上前から、生業に関わる信仰が大切に受け継がれてきたことを明らかにした。

Keywords

山形市蔵王上野 古文書 寺社 石碑 信仰 生業

PDFはこちら

PDFはこちらより閲覧できます。