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ブックの説明

変わりゆく宿坊街と人々
-山形県鶴岡市羽黒町手向における宿坊運営・経営形態の変遷-
The Changing Shukubo Town and People
-Changes in Shukubo Operation and Management in Touge, Haguro-machi, Tsuruoka City,Yamagata Prefecture-

伊藤 颯希
ITO Satsuki

 本稿では、山形県鶴岡市羽黒町手向地区を対象に宿坊街の地域社会の変容を主要産業の推移、霞・檀那株取引の変化、宿坊の運営・経営形態の変化の3点から検討した。手向では三山参詣の最盛期である江戸時代から明治の神仏分離を挟み、大正年間に至るまで修験活動が主産業であった。しかし昭和以降は農業・商業へと転換しており、これを本稿では昭和恐慌による不況が原因であると指摘した。また、現地での調査を重ねる中で、手向では現在にかけて夏季に宿坊を閉じ、冬季の檀廻りに専念する修験者が増加していることが判明した。これには収入源である講中の高齢化による未継承、災害など物理的断絶が進んだことに起因していると言える。このような社会情勢に翻弄される宿坊運営・経営の継承だが、手向では明治19年に「手向村恨例保続規約」の施行や、三山参詣人案内所の運営によって集落全体で道者の管理を行っていた。このような活動が現在に至るまで講中と宿坊を繋ぎ止める役割を果たし、手向宿坊街の運営・経営の継承に大きく寄与したと言える。

Keywords

出羽三山 宿坊 宗教集落

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