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学術調査 Ⅰ 石造文化財保存処理の現状と課題

人間が創り伝えてきた歴史は、人類社会の進む
べき方向、理想的なあり方を示唆すると言われる。
そのひとつが文化遺産や遺跡であり、それは人類
社会の羅針盤ともいえる、歴史的な物的証拠なの
である。
遺跡は、地域の歴史を学ぶ場、未来を考える場
として活用できるように保存し、整備されてきた。
最近では地域の活性化を図り、町づくり推進のた
めに遺跡を活用することが活発化している。特に、
近年の傾向では観光資源としての活用が強調され
るようになり、行政が率先して地域文化の創生に
傾注する地域も少なくない。他方では、世界遺産
登録推進活動の展開や、日本遺産の認定を受ける
ことで歴史や文化を通じた地域の活性化をめざす
ところも多い。このように文化遺産・遺跡を媒体
にした地域のアイデンティティを前面に打ち出し
た文化的活動が近年の傾向といえる。かつての芸
術的・学術的な価値をもつ文化遺産という認識か
ら、観光資源として地域振興のために活用する遺
産へと文化遺産・遺跡に対する概念が変わりつつ
あるように思う。
遺跡保存の分野においても、公開・活用を前提
とした技術開発を進める必要がありそうだ。遺跡
保存の一翼を担うはずの保存科学分野だが、こう
した動きに適切に対応しなければならない。

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