総ページ数

P17

ブックの説明

京都平野における竪穴系横口式石室の展開と地域性
Development and Regionality of Pit-Type Stone Chambers with
Side Entrance in the Miyako Plain

山本 翔太
YAMAMOTO Syota

 本稿では周防灘沿岸部にあたる京都平野の竪穴系横口式石室を対象として、腰石と袖石の二つの属性から石室の型式分類を行い、さらに出土遺物による年代観をもとに地域編年を提示することで、竪穴系横口式石室の導入及び展開について考察した。その結果、京都平野では玄室側壁を基底部から平積みする型式が古式な竪穴系横口式石室の特徴として捉えられ、筑肥地域よりも腰石の採用は比較的遅れた時期にみられる。そして竪穴系横口式石室の展開には京都平野の全体に共通する大きな画期が認められ、横口部の導入を第一の画期として、腰石の導入がされる第二の画期、玄室幅指数が53.0前後であるⅡB₂式の石室のみが築造される第三の画期が挙げられる。型式の地理的な分布については京都平野内でも苅田丘陵を中心とする北部地域と稲童海岸部から犀川盆地に至るまでの南部地域には竪穴系横口式石室の導入及び展開の様相に地域差があり、袖石の採用に差異が認められることが判明した。また分析に有効な指標として奥壁幅と玄室長から導き出した玄室幅指数をもとに玄室の平面プランと型式及び時期的な変遷との関連を検討した。結果として型式の変遷に伴って狭長な石室から玄室長に対して奥壁幅の広い石室へ移行していく傾向がみられ、京都平野においては玄室の平面プランが竪穴系横口式石室の変遷を考察していく上で有効な指標であると考えられる。さらに京都平野における竪穴系横口式石室の南北の地域差は横穴式石室を採用した首長系譜からの影響の違いが要因にあると考え、試論として先行墓制である竪穴式石室から竪穴系横口式石室への移行過程に注目した。本稿では南部地域の稲童21号墳が隣接する田川地域の猫迫1号墳からの影響を受けて成立したことを推定し、副葬品の出土状況から両地域間において軍事的な関係をはじめとした密接な交流のあった可能性を指摘した。

Keywords

京都平野 竪穴系横口式石室 型式分類 平面プラン

PDFはこちら

PDFはこちらより閲覧できます。